犬の睡眠時間は犬種や個体差、飼育環境によって多少の違いはあるものの、1日の半分以上は睡眠をとっています。仔犬や老犬はさらに睡眠時間が多くなります。愛犬の睡眠時間の変化が病気と関係していることも考えられますので、今回は睡眠時間と健康状態のお話になります。
犬の睡眠時間と健康状態の関係
犬が必要とする睡眠時間は?
もともと犬は夜行性の動物ですので、狩りは獲物を狙いやすい夜に活動することが都合よく、活動をしない日中に体を休めるために寝ることが多くありましたが、やがてペットとして人間と一緒に生活するようになると、適応能力が優れている犬は人間の生活リズムに合わせて夜でも長く眠るようになったようです。
それでも、活動しない日中に眠る野生の名残が今も根強く残っているため、犬は昼も夜もよく眠るようになったと言われています。そして犬も人間同様、浅い眠りの『レム睡眠』と深い眠りの『ノンレム睡眠』を繰り返し、その80%は『レム睡眠』で20%が『ノンレム睡眠』と言われています。そこで、犬の睡眠時間について見ていきます。
幼犬の場合(0~6ヶ月)の睡眠時間は18~19時間が一般的とされているようです。幼犬の場合は好奇心が旺盛のため、あっちこっちに動きまわるためエネルギーを消費することもあり、体力回復のためにも睡眠時間を多く確保してあげる必要があるようです。可愛い仔犬と沢山遊んであげたいと思うでしょうが、幼犬の時期の睡眠は脳と体の成長に欠かせないこともあり、十分な睡眠時間を確保してあげることも忘れずに覚えておきましょう。
成犬の場合(1~7歳頃)は一般的に12~15時間の睡眠と言われていますが飼い主さんのライフスタイルによっても変わる可能性があります。仮に、飼い主さんが昼間いない場合は愛犬の昼寝の時間が増える可能性や、散歩が朝・夕どちらか1回の場合などは愛犬が体力を持て余してしまうことで、夜の寝つきが悪くなることもあり、そう言った時にはお家での遊びを多くするのも大切になります。
老犬の場合(8歳頃~)は18~20時間と睡眠時間も増えてきます。犬種や個体差によっても変わりますが、徐々に体力も低下し始め疲れやすくなります。食事やトイレ以外は殆ど寝ているという極端な例もあります。
※犬の大きさの定義……一般的には10㎏未満が小型犬、10~25㎏未満が中型犬、25㎏以上が大型犬とされていますが正式なものではありません。同じ犬種でも個体差があり大きさが違ってきますので、あくまでも一つの目安になります。例えば、ペットホテル、トリミングサロン、ドッグランなどにおいて大きさにより分けられることがあります。
ジャパンケンネルクラブ(JKC)などの畜犬団体では体高と体重の基準を定めていますが「小型犬」「中型犬」「大型犬」の大きさの明確な区別の定義は定めていません。
犬種の中には小型犬と中型犬の区別がはっきりとした区別がつかない犬種があります。例えば、柴犬ですが「日本犬保存会」では小型犬に分類されています。理由として、6日本犬種(北海道犬、秋田犬、甲斐犬、紀州犬、四国犬、柴犬)のうちで一番小さかったからと言うことですが、公的に定められているわけではないようです。個体差があることからペットホテル、トリミングサロンなどで中型犬として扱われることもあります。今回の分類では小型犬としています。
チワワ、ロングコートチワワ:約10~12時間
ミニチュアダックスフンド:約11~15時間 ポメラニアン:約12~13時間
ヨークシャーテリア、トイプードル、タイニープードル、柴犬、パグ、マルチーズ、パピヨン、
キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル、ノーリッチ・テリア:約12~14時間
シーズー、ジャックラッセルテリ、ミニチュア・シュナウザー:約12~15時間
ペキニーズ:約12~18時間 ビション・フリーゼ:約16~18時間
北海道犬、チベタン・テリア:約9~14時間 甲斐犬、バセットハウンド、バセンジー:約12~13時間
ボーダーコリー、コーギー、ミニチュアシュナウザー、ビーグル、ウィペット、イングリッシュ・コッカー・スパニエル、シェットランド・シープドッグ、ウィペット:約12~14時間
アメリカン・コッカー・スパニエル、ボストン・テリア:約12~15時間
フレンチ・ブルドッグ:約14~15時間
秋田犬、土佐犬:約9~14時間
シベリアン・ハスキー:約12時間 ダルメシアン:約12~13時間
ジャーマン・シェパー、ボーダー・コリー、ドーベルマン:約12~15時間
ゴールデンレトリバー、ラブラドールレトリバー:約14~16時間 マスティフ:約16時間
グレート・ピレニー、ボルゾイ、アラスカン・マラミュート:約14~18時間
セント・バーナード:約16~18時間 グレーハウンド:約18時間
上記のそれぞれの睡眠時間をふまえた上で、愛犬がいつもよりも長く寝ている場合には体調不良や病気のサインの可能性があります。
過度な睡眠は危険な病気のサイン
愛犬が良く寝るといっても、長すぎる睡眠時間は病気につながる可能性もあります。睡眠時間を長期化させる主な要因は大きく分けて4つほど考えられます。
それは、ストレスからくる場合や、甲状腺機能の低下、関節疾患・椎間板ヘルニア、あとひとつはワンちゃんが特定の病気を患っている場合です。
①ストレスが原因になる場合
愛犬がストレスを感じると神経の疲れから多くの睡眠をとろうとすることがあります。原因としては、あらゆる環境の変化があります。例えば、引っ越しをして今までとは家の周りの環境が一変してしまい、散歩なども中々馴染めないことから、それに伴い運動不足を引き起こしたり、家族構成の変化からコミュニケーション不足などが重なりストレスがたまってしまうことがあります。
②甲状腺機能の低下
甲状腺機能が低下することでホルモンの分泌が上手くいかず、代謝機能が低下することで眠気を誘うようになります。なので、普段の睡眠時間よりも多くなってしまいます。犬にとっても甲状腺ホルモンはとても大事なホルモンです。甲状腺ホルモンの不足で睡眠時間が長くなる以外にも、体重の増加、脱毛、悪寒、心拍数の低下などの症状が出てくるようです。こういった場合は動物病院で診てもらうことをお勧めします。(4~6歳頃に多い)
③関節疾患、椎間板ヘルニア
関節に痛みがあると動くのが億劫になることから寝ている時間が多くなることがあります。足や腰などに痛みがあると体に触れられることを拒否することがあります。関節炎や椎間板ヘルニアは、ある日突然起きる場合があります。歩き方や動きに違和感を感じたら迷わず動物病院で診てもらうことをお勧めします。
④犬が特定の病気を患っている場合
感染症や糖尿病などで睡眠時間が長くなることがあるようです。これらが進行すると全身状態が悪化するため睡眠時間が長くなることがあります。糖尿病の場合はどの犬種でもかかることがありますが、特にダックスフンドやトイプードルの発症が多いようです。そして、白内障や膀胱炎なども発症しやすくなります。
犬の寝相からわかる気持ちと健康状態
適度な運動はワンちゃんにとっても心身に刺激を与え、快適な睡眠時間へとつながります。逆に運動不足になると犬にとってもストレスになってしまうこともあるようです。
夜中に起き出してイタズラをしたり、落ち着いて眠られないというのは、普段の運動不足や、ストレスが原因かもしれません。適度に運動量を増やすことで改善される場合もありますよ。
身体をまぁ~るくドーナツ状にして寝るのは基本的な寝方で、まぁ~るくなることで体温の放出を防ぎ内臓などを守っています。寒くなると、まぁ~るくなる寝相が多くなりますが、暑いときでも、まぁ~るくなる場合には野生時の習性で敵から身を守ろうとしていることが考えられます。
愛犬が手足をだら~とした状態で横を向いて寝ているときは、とてもリラックスしています。横向きの寝相は犬にとって、とっても楽に寝られる姿勢で警戒心からも解き放されて安心しきった状態なので熟睡が出来ます。しかし、愛犬が暑さを感じている時にもこの寝相になることがあります。夏場の蒸し暑い夜などは様子を見ながら温度調節をしてあげるとかいてきなすいみんじかんになります。
いわゆる「へそ天」と言われる寝方ですが、この寝相は犬の急所であるお腹を無防備にさらけ出していることから最高にリラックスしている状態で、お家の環境や寝床、飼い主さんなどに安心しきっている証になります。野犬には、あまり見ることのできない寝方です。
また、愛犬が暑さを感じている時に熱を放出するためにこの寝相になることがあります。
愛犬と一緒に寝ている場合には、飼い主さんに背中を向けピッタリとくっついて寝ることがあります。これは飼い主さんを信頼し心を許しリラックスしている証です。
◆祈りのポーズ
犬が散歩で相手を遊びに誘うときに見せるポーズに似ています。前足を伸ばし、お尻を高く上げ後ろ足を少し立たせた姿勢。この姿勢をよく取る場合には腹痛を感じていることが多く、膵炎の疑いがあります。この姿勢は内蔵の圧迫から痛みを和らげようとするためです。膵炎の場合は嘔吐や下痢、食欲不振などの症状が現れますのですぐに動物病院での検診が必要になります。
◆四肢を開いて横向きに寝る
この寝相で熟睡している場合は問題ありませんが、睡眠中の呼吸が早い場合は、上記で述べたように暑さを感じてお腹の熱を逃がすために四肢を開くことがあります。落ち着きがなくウロウロする場合は、エアコンなどで適切な温度調整をしてあげましょう。特に、短頭種は暑さに弱いので注意が必要です。
◆睡眠中の動きに注目
睡眠中に夢を見ていると体を動かすことがあります。この時、犬が見ている夢の内容によっては手足や口、目や耳などが動くことがあります。夢を見ているときの身体の動きはそれほど大きくはありませんが、夢とは関係なく手足が大きく動く場合、脳腫瘍、てんかんの可能性も考えられます。仮に発作が起きてしまっても慌てて身体を抑え込もうとせず静かに見守りましょう。無理に体に触れることで、たまたま手が愛犬の口元に触れた場合、噛まれて怪我をすることがあります。様子を見ながら後日、動物病院で診察を受けるようにしましょう。出来れば動画を撮っておくと診察の際に参考になります。
まとめ
犬の睡眠時間は犬種や個体差によっても異なりますが、人間と比べ多くの睡眠が必要になります。それは犬が野生で生きて行く為に、獲物と戦う時の体力を温存しておく必要があったからで、今もその名残が残っています。しかし、そうは言っても睡眠が長すぎると愛犬が何らかの病気を患っている可能性も考えられます。愛犬の健康を考え日ごろから睡眠時間や睡眠時の身体の動きなどには注意深く見守っていきたいものです。
コメント