これから季節が夏に向かい、次第に気温も上昇し暑い季節がやってきます。特に最近は異常気象で猛暑日も多くなって人間のみならず動物たちにとっても厳しい日々が続きます。そんな中ペットの犬たちにとっても朝夕の散歩は人間同様暑さ対策が欠かせません。
その対策の一つが水分補給ですが、暑さ対策に限らず日常的に犬にとっても水は必要不可欠な存在です。今回の『ワンコだより』は犬と水についてのお話になります。
犬にとって水が大切な理由とは?
水は犬の体内で様々な働きをしています。血液やリンパ液のような体液として栄養素やホルモンを体の隅々まで運び、老廃物や過剰に摂取した物質を回収するなど、愛犬が日々健康に過ごすために欠かすことのできない重要な役割を担っています。
犬の体の約○○%は水分!
犬の体は約60〜70%が水分で構成されています。これは人間とほぼ同じ割合で、健康を保つために水分がどれほど重要かを示しています。水分は、体内の代謝や栄養素の運搬、老廃物の排出、体温調整など多くの生命活動に関与しています。水分が不足すると、脱水症状や便秘、食欲不振、さらには臓器機能の低下など、さまざまな健康リスクが現れます。特に暑い季節や運動後は、体内の水分が失われやすくなり注意が必要です。
また、犬は人間のように汗をかいて体温を調整することができません。主に呼吸(パンティング)によって熱を逃がしますが、それにより体内の水分が失われるため、こまめな水分補給が重要になります。特に子犬やシニア犬、病気を持つ犬は脱水になりやすく、水の摂取が不十分だと命にかかわることもあります。
したがって、犬がいつでも新鮮な水を飲めるように、飲み水の管理は飼い主の重要な役割です。清潔な水を用意すること、飲み水を定期的に交換することを忘れないようにしましょう。
1日に必要な水の量はどのくらい?
犬が1日に必要とする水分量は単に水を摂取するだけではなく、ドックフードやおやつなどからも多少ではありますが補うことは出来ています。しかし、勿論それだけでは必要量を満たすことは出来ません。
体重別の水分摂取量の目安
犬の1日に必要な水分量の目安は、「体重1kgあたり50〜60ml」と言われています。たとえば体重5kgの小型犬なら約250〜300ml、中型犬10kgで約500〜600ml、大型犬30kgなら1500ml前後が理想です。ただし、この数値はあくまでも目安であり、気温や湿度、運動量、食事の水分量によっても大きく変わります。
水分摂取量の早見表(目安) | ||
体 重(kg) | 目安の水分量(ml/日) | 備 考 |
1kg | 50〜60ml | 超小型犬・子犬 |
3kg | 150〜180ml | チワワなど |
5kg | 250〜300ml | トイプードル、ポメラニアン |
10kg | 500〜600ml | 柴犬、コーギー |
20kg | 1000〜1200ml | シェルティ、ボーダーコリー |
30kg | 1500〜1800ml | ラブラドール、ゴールデン |
40kg | 2000ml以上 | 超大型犬 |
※運動量、気温、フードの水分量によって変わります。※あくまでも目安です。極端な増減があれば獣医師へ相談を。
ドライフードを食べている犬は水分が不足しやすく、逆にウェットフード中心の犬は食事からある程度の水分を補えています。また、夏場や運動後は喉が渇きやすくなるため、通常よりも多めの水を用意する必要があります。
ですので飼い主としては、日々の飲水量をざっくりでも把握しておくことが大切です。最近水をたくさん飲んでいる、あるいはほとんど飲まなくなったなどの変化に気づくことが、病気の早期発見にもつながります。また、水入れの容量を確認し、1日ごとの減り具合をチェックするだけでも習慣にしておくと安心です。
上記の食器セットは愛犬コタ2に良かれと思い買い揃え、水とご飯をセットして『ハイどうぞ』と差し出してみたもののも『何コレ!』といった感じで近寄らず周りをうろうろするばかりで、食べることもせず水も飲みません!はじめて見たので警戒心の強いコタ2は様子を伺っていたのかも。仕方がないので、いつも使っているものにしてみると(下の写真)
水の飲みすぎ・飲まなさすぎのサイン
犬が水を「飲みすぎている」場合、注意が必要です。代表的な原因には、糖尿病や腎不全、クッシング症候群といった病気があります。目安としては、体重1kgあたり100mlを超えるような水分摂取が継続している場合、動物病院での検査をおすすめします。頻繁にトイレに行く、寝床でおもらしするなどの変化が見られる場合は、早めに受診しましょう。
ここに出てきたちょっと聞きなれない言葉のクッシング症候群について
■犬のクッシング症候群とは?
犬のホルモンの病気のひとつで、正式には「副腎皮質機能亢進症(ふくじんひしつきのうこうしんしょう)」と呼ばれます。ホルモンのバランスが崩れることで、水を大量に飲む・おしっこが増える・お腹がぽっこり出るなどの症状が現れます。
★その原因は
クッシング症候群は、体内で「コルチゾール」というホルモンが過剰に分泌されることで発症します。
主な原因は3つ
1. 下垂体性(かすいたいせい):脳にある下垂体に腫瘍ができ、ACTHというホルモンを過剰に出してしまう(最も多いタイプ)。
2. 副腎性:副腎自体に腫瘍ができ、コルチゾールが直接過剰になる。
3. 医原性(いげんせい):ステロイド薬の長期使用が原因で発症することも。
🧠 主な症状
●水をがぶがぶ飲む(多飲)
●おしっこがやたら多い(多尿)
●お腹がぽっこり出てくる(腹部膨満)
●被毛が薄くなる、脱毛
●筋肉が落ちて後ろ足がふらつく
●食欲はむしろ旺盛になる
📝特に「水をたくさん飲む+おしっこが増える」は、飼い主が最初に気づくサインです。
🧪診断と治療
▶血液検査・ホルモン検査(ACTH刺激試験など)で診断します。
▶治療は症状や原因に応じて
●内服薬(トリロスタンなど)
●手術(副腎腫瘍の場合)
●ステロイド中止(医原性)
🧪診断と治療法についてもう少し詳しく
動物病院では、まず血液検査で異常がないかをチェックし、ACTH刺激試験やデキサメタゾン抑制試験といったホルモンの精密検査でクッシング症候群かどうかを判断します。さらに超音波検査やCTなどで腫瘍の有無も確認されます。
治療法は原因によって異なりますが、最も一般的なのは「トリロスタン(商品名:アドレスタン)」という内服薬で、副腎からのコルチゾール分泌を抑える治療です。副腎に腫瘍がある場合は、外科手術を選択するケースもあります。医原性の場合は、ステロイド薬の使用量を調整・中止する必要があります。
治療は一生続く可能性があるため、飼い主さんの継続的な観察と、定期的な血液検査によるモニタリングがとても大切です。
🐶 気をつけたいポイント
高齢犬(8歳以上)に多く見られる病気です。
「水をやたら飲むなぁ」と思ったら、早めに動物病院で相談するのがベスト。
■クッシング症候群のセルフチェックリスト
項 目 | チェック |
おしっこの量や回数が増えた | □ |
最近、水をやたら飲むようになった | □ |
お腹がぽっこりしてきた | □ |
毛が抜けやすくなった、薄くなった | □ |
筋肉が落ちて後ろ足がふらつく | □ |
食欲はあるのに痩せてきた | □ |
シニア期(8歳以上)である | □ |
★3つ以上当てはまったら要注意!獣医師に相談を。
■初診時に持参したい「気づいたことメモ」
診察時に伝えるとよいポイント:
●いつから症状が見られるようになったか?
●1日に飲んでいる水の量(できれば測定)
●おしっこの回数や量の変化
●食欲や体重の増減
●過去にステロイドを使ったことがあるかどうか
一方で、「水を飲まない」ことも深刻な問題です。脱水状態が続くと、血液の循環や臓器の働きに支障をきたし、命の危険もあります。特に子犬や高齢犬は脱水に弱く、目が落ちくぼむ、皮膚の弾力がなくなる、歯茎が乾いているなどの症状が現れたら危険信号です。
急に水の摂取量が変わったときは、気温や運動量、食事の内容、ストレス、体調不良など、背景にある原因を探ることが重要です。「飲みすぎ」「飲まなすぎ」のどちらも放置せず、早めに獣医師に相談することが大切です。
犬が水を飲まないときの対処法
愛犬が水をあまり飲まなくなると飼い主さんとしても心配になりますが、少し落着き日頃の様子を観察するようにしましょう。
飲まない原因と考えられる理由
犬が水を飲まなくなる理由はさまざまです。まず多いのが「水の質やにおいに問題がある」ケース。特に水道水のカルキ臭や雑菌の繁殖した水は犬が嫌がる傾向があります。また、器が汚れていたり、素材や形状が合わなかったりすることもあります。金属製の器が苦手な犬もいますし、深すぎる器が飲みにくく感じる場合もあります。
他にも、「環境の変化やストレス」も大きな要因です。引っ越しや来客、他の動物の存在などにより、落ち着いて水を飲めない状況になっているかもしれません。また、暑い季節でも水が冷たすぎると口をつけたがらない犬もいます。
さらに、病気による影響も見逃せません。口内炎や歯周病、消化器系の不調、痛みなどにより水を飲むこと自体が苦痛になっている場合もあります。飲水を嫌がる場合には、体調をよく観察し、必要に応じて動物病院での診察を受けることが重要です。
飲みやすくする工夫とアイデア
愛犬が水をしっかり飲んでくれるようにするためには、ちょっとした工夫が有効です。まず試してほしいのが「給水器の見直し」。フィルター付きで流れるタイプの自動給水器は、常に新鮮な水が流れるため、興味を引きやすく飲みやすいと人気です。
また、フードに水分を加えるのも効果的。ドライフードにぬるま湯や犬用スープをかけることで、食事から自然に水分を摂取できます。鶏肉のゆで汁(塩分なし)を薄めて加えると香りが立ち、嗜好性もアップします。
さらに、夏場などは氷を浮かべて遊びながら飲ませる工夫も。冷たすぎる水を避けつつ、適度に温度調整することも大切です。器の高さや材質も見直して、飲みやすい位置・形を探ってみてください。
日常的に「水を飲む=楽しいこと」と結びつけることが、自然な水分補給の習慣づけにつながります。
水道水は犬に与えても大丈夫?
犬に与える水のことを、普段あまり深く考えることはないと思いますが、これを機に少し考えてみるのも良いかもしれません。
日本の水道水の安全性と注意点
日本の水道水は世界的に見ても安全性が高く、犬に与えても基本的には問題ありません。ただし、人間と同様に「カルキ臭(塩素)」を嫌がる犬も多く、飲水量が減る原因になることがあります。その場合は、浄水器を通した水や、一度煮沸して冷ました水を与えると良いでしょう。
注意が必要なのは「硬水」と「ミネラルウォーター」。特にマグネシウムやカルシウムの多い硬水は、犬の腎臓に負担をかけることがあり、長期間与えるのは避けた方が無難です。市販の水を使う場合は、「軟水」や「犬用の飲料水」を選ぶと安心です。
また、古い配管の住宅では、水に金属が混ざるリスクもゼロではありません。心配な場合はフィルターを使うなど対策を講じましょう。ペット用の水素水やアルカリイオン水なども市販されていますが、通常は普通の軟水で十分です。
水の安全性だけでなく「いつでも飲める環境づくり」も忘れずに。器の位置や水の清潔さにも配慮しながら、水分補給をサポートしてあげましょう。
まとめ
犬にとって水は命の源!
日々の水分補給は健康維持に不可欠。季節や体調によって必要量は変わるため、愛犬の様子を観察しながら適切なケアを心がけましょう。
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