
犬の散歩中、こちらが何も指示を出していないのに、愛犬が突然その場でお座りをすることがあります。
「疲れたのかな」「可愛いな」と軽く受け取ってしまいがちですが、そのお座りが毎回同じような場面で起きているとしたら、そこには愛犬なりの理由があるのかもしれません。
遠くに犬や人が見えたとき、あるいは何かの気配を感じ取った瞬間に立ち止まり、完全に腰を下ろして待つ。その行動は、散歩を拒否しているわけでも、わがままを言っているわけでもなく、言葉を持たない犬が選んだ一つのコミュニケーション手段とも考えられます。
この記事では、散歩中に見られる「お座り」という行動を、実際の観察をもとに紐解きながら、犬の気持ちと飼い主の関わり方について考えていきます。
散歩中にお座りをして他の犬を待つのはどうして?
散歩中、愛犬が完全にお座りをして前方を見つめる場面を観察していると、ある共通点が見えてきます。それは、対象そのものよりも「何かが来る気配」に反応しているという点です。遠くに犬や人が見えたとき、あるいは姿は見えなくても音や空気の変化を感じ取った瞬間に、その場で動きを止めて腰を下ろします。
このお座りのあとには、大きく分けて二つの行動パターンがあります。一つは、相手が近づいてきたタイミングで自分から駆け寄っていくケース。もう一つは、そのまま座った状態を保ち、相手が通り過ぎるのを静かに待つケースです。つまり、お座りは「行動の終わり」ではなく、「次の行動を選ぶための準備時間」として使われているように見えます。

犬にとって散歩は、ただ前に進むだけの時間ではありません。周囲の状況を読み取り、自分がどう振る舞うかを判断する連続でもあります。その中でお座りをするという選択は、自分を落ち着かせ、相手との距離や関係性を測るための自然な行動の一つだと考えられます。
散歩中のお座りは人間の言葉に代わる表現方法の一つ
犬は言葉で「ちょっと様子を見たい」「今は急がないでほしい」と伝えることができません。その代わりに、姿勢や動きといったボディーランゲージを使って意思を表現します。完全に腰を下ろして動かなくなる「お座り」は、その中でも分かりやすいサインの一つです。
特に他の犬が関わる場面でのお座りには、「敵意はない」「落ち着きたい」という気持ちが含まれていることがあります。これはカーミングシグナルと呼ばれる行動の一種で、相手を刺激しないようにすると同時に、自分自身の興奮も抑えようとする働きを持っています。
最初は可愛い仕草に見えていたとしても、同じ場面で何度も繰り返されることで、「これはこの子なりの伝え方なのだ」と気づくことがあります。言葉を持たない犬にとって、お座りは状況を調整するための大切な表現手段なのです。
カーミングシグナルには、こんな行動があります
犬は緊張したときや、相手との衝突を避けたいときに、さまざまな行動で気持ちを伝えようとします。代表的なものには、視線を逸らす、あくびをする、背中を向ける、伏せをする、鼻や口を舐めるといった動きがあります。
これらはいずれも、「敵意はない」「落ち着きたい」というサインとして使われることが多い行動です。
そして、お座りもその一つです。
散歩中に完全に腰を下ろして動かなくなる姿勢は、相手を刺激しないようにすると同時に、自分自身の気持ちを落ち着かせようとする行動として見ることができます。
散歩中のお座りは他の犬と飼い主さんに自分の気持ちを伝えるため
このお座りは、相手の犬だけでなく、そばにいる飼い主に向けたサインでもあります。「今は様子を見たい」「自分のペースで判断したい」という気持ちを、行動で伝えているとも言えるでしょう。
興味深いのは、相手の犬が興奮している場合には無理に近づこうとせず、通り過ぎるのを待つ選択をする点です。これは相手の状態を読み取り、距離を保つことで状況を悪化させないようにしている行動にも見えます。一方で、安心できると判断した相手には自分から近づいていく。この使い分けからも、お座りが単なる停止ではなく、相互理解のための準備動作であることが分かります。
飼い主としては、その場で何かをさせようと操作したり、無理に動かそうとしなくても、愛犬は自分なりに考え、選択しています。お座りという行動を「止まって困るもの」と捉えるのではなく、「気持ちを伝えようとしている時間」として見守ることで、散歩中のコミュニケーションはより穏やかなものになっていきます。
散歩中での他の犬との接し方
散歩中に愛犬がお座りをして他の犬を待つ場面では、飼い主としてどう関わるかが問われます。すぐに動かそうとしたり、リードを操作して行動を変えさせようとしたくなるかもしれませんが、必ずしもそれが正解とは限りません。
犬にも個性があるので我が愛犬の性格を把握する
同じ「お座り」という行動でも、その意味や長さは犬によって異なります。他の犬が短時間で立ち上がるのに対し、長く座り続ける犬もいます。それは優劣ではなく、その犬なりの判断の仕方や安心の作り方の違いです。
散歩中の行動を通して、「どんな場面で立ち止まるのか」「その後どう動くのか」を観察していくと、愛犬の傾向が見えてきます。吠えや警戒心が強く見える場合でも、実は自分なりに距離を取ろうとしているだけ、ということも少なくありません。
散歩中に出会う他の犬たちが、どんな性格をしているのかを正確に知ることはできません。だからこそ大切になるのが、まず自分の愛犬が「どんな傾向を持っているのか」を把握しておくことです。

たとえば、散歩を重ねる中で次のようなことが少しずつ見えてきます。
他の犬に興味を示しやすいのか、それとも距離を取りたがるのか。人が好きなのか、飼い主以外には慎重なのか。何にでも反応するタイプなのか、比較的無関心でいられるのか。興奮しやすいのか、落ち着いて状況を見られるのか。物音に敏感かどうか、初めての刺激にどう反応するか。
また、「待て」や「お座り」といった指示に対して、どの程度落ち着いて応じられるかも、その子の性格や安心度を知る手がかりになります。
こうした傾向を知っていると、散歩中に出会う犬や人との距離感を、その場の様子を見ながら調整しやすくなります。相手を判断するのではなく、自分の愛犬が今どんな状態なのかを基準に考える。それが、無理のない接し方につながっていきます。
散歩中のこうした行動は、
性格だけでなく、日々の散歩量や刺激の受け方とも深く関係しています。
我が家のデカプーで実際に感じた
散歩量・引っ張り癖・性格の関係については、こちらでまとめています。
散歩中に愛犬のために飼い主さんが気を付けたいこと
愛犬がお座りをしているとき、飼い主ができることは意外と多くありません。無理に声をかけ続けたり、抱っこをしたりする必要がない場合もあります。むしろ、愛犬の判断を尊重し、落ち着くまで待つことが、結果的にトラブルを避けることにつながります。
他の飼い主や犬との距離感にも配慮しつつ、愛犬が自分で選んだ行動を見守る。その姿勢が、散歩を「訓練の時間」ではなく、「お互いを理解する時間」に変えてくれます。

散歩中は、愛犬同士だけでなく、飼い主同士の関係性もその場の空気を左右します。まずは挨拶を交わし、愛犬の様子を見ながら「ご挨拶、大丈夫そうですか?」と一言確認するだけでも、無用なトラブルは避けやすくなります。たとえ自分の愛犬が落ち着いていても、相手の飼い主から「うちは少し怖がりで」と返ってきた場合には、無理に関わろうとせず距離を取る判断も大切です。
また、通りの反対側からお互いに関心を示している場合でも、周囲の安全を確認し、飼い主同士の了解を得たうえで近づくようにした方が安心です。近づく前から吠えが出る場合には、相性やその時の気分が合わない可能性もあるため、無理に挨拶をさせない選択も必要になります。
何度も顔を合わせている犬同士であっても、その日の状態によって反応が変わることがあります。相手の犬が吠えていても、こちらの愛犬が落ち着いていられる場合には、静かに様子を見守ることで、時間とともに関係が和らぐこともあります。これはあくまで一例であり、すべての犬に当てはまるわけではありませんが、経験として知っておくと判断の幅が広がります。

さらに、犬よりも人に強い興味を示す犬もいます。お座りをして待っていても、人に近づこうとすることがあるため、その場合は一言謝り、相手の反応を見ながら対応する姿勢が求められます。犬が好きな人ばかりではないことを前提に考えることも、散歩では欠かせません。
相手側が通りすがりに吠えてくることもありますが、そのような場面では無理に関わろうとせず、愛犬に声を掛けながら通り過ぎるのを待つことで、状況が落ち着くこともあります。大切なのは、その場で「正しい行動」を取ろうとすることよりも、愛犬と周囲の双方にとって負担の少ない選択をすることです。
まとめ
散歩中に愛犬がお座りをして他の犬を待つ行動は、単なる「立ち止まり」や「わがまま」ではなく、相手に対して敵意がないことを伝え、状況を穏やかにしようとする愛犬なりの意思表示です。言葉を持たない犬にとって、お座りは人間の言葉に代わる大切なコミュニケーション手段であり、カーミングシグナルの一つでもあります。
最初は「可愛い」と感じたり、「なぜ動かないのだろう」と戸惑ったりすることもあるかもしれません。しかし、その行動の意味を知ることで、愛犬がどんな気持ちで周囲と向き合っているのかが少しずつ見えてきます。散歩中の行動には、その犬の性格や経験、相手との距離感が色濃く表れます。
だからこそ大切なのは、他の犬と比べることではなく、我が愛犬の個性を理解し、その気持ちを尊重することです。すぐに正解を出そうとせず、待つこと、離れること、声を掛けることを状況に応じて選ぶだけでも、散歩はずっと穏やかな時間になります。
愛犬がお座りをして待つ姿は、「落ち着きたい」「争いたくない」「様子を見たい」というサインかもしれません。その小さなサインに気づき、寄り添うことができたとき、散歩はただの運動ではなく、愛犬との信頼を深める大切なコミュニケーションの時間へと変わっていくはずです。


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