夏になると、甘くてみずみずしいスイカが食卓に並ぶ機会が増えますね。ひんやりとしたスイカを美味しそうに頬張る飼い主を見て、「ボクにもちょうだい!」と見つめてくるワンちゃん…。そんな愛犬にスイカをあげてもいいのか、不安に感じたことはありませんか?
この記事では、ースイカは犬にとって安全な果物なのか?ーから始まり、含まれる栄養素や健康へのメリット、与える際の適量や注意点まで詳しく解説します。今回はトイプードルなどの小型犬の例を参考にしながら、飼い主さんが安心してスイカを取り入れられるようにまとめました。
犬にスイカは大丈夫?与え方の基本ルールとは
結論から言えば、スイカは適切な量と与え方を守れば、犬に与えても基本的に問題ありません。スイカの約90%は水分で、糖分もフルーツの中では比較的少なめ。暑い時期の水分補給や熱中症対策としてもおすすめです。
ただし、ー人間と同じ感覚で大量に与えるのはNG。ー 果糖による血糖値上昇や、冷えすぎた果物による下痢のリスクもあります。
基本ポイントは以下の通りです:
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与えていいのは赤い果肉部分のみ(皮や種はNG)
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冷やしすぎず、常温または軽く冷やす程度が理想
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食べやすいように細かくカットすること(特に小型犬には細かく砕く)
「ほんの一口」から始めて、体調を見ながら与えていくのがベストです。
スイカの栄養素と犬への健康メリット&注意点
ここでは、犬にとって嬉しいスイカの栄養素と注意点を以下の項目ごとに丁寧に解説します。
水分補給(約90%が水分)について
犬にとってスイカは、約90%が水分なので暑い季節にぴったりな水分源になります。お散歩後の軽い脱水対策や熱中症予防、そして一部の栄養素の摂取に役立つ可能性があります。
スイカの水分を摂取した方が良い犬は:
水をあまり飲まない犬 …スイカは犬の水分補給に貢献します。仔犬や老犬でも適量であれば問題ありません。また、暑い日には、スイカは体を冷やす効果もあります。
食欲が落ちてきた犬 … 水分補給と少量で栄養補給ができ健康維持に役立ちます。
スイカの水分摂取に注意が必要な犬は:
スイカアレルギーを持つ犬 …スイカ以外のアレルギーがある場合は、最初は少量から始めるようにしましょう。
病気がある犬 … 腎臓病などの病気がある場合は、獣医師に相談してから与えるようにしましょう。スイカにはカリウムが含まれており、腎臓や心臓の機能が低下している犬はカリウムの摂取を制限する必要があります。
糖尿病の犬 … 糖尿病の犬は、脱水症状になりやすいので、水分補給は重要です。少量であれば、水分補給や栄養補給として役立つ可能性がありますが、与えすぎると血糖値が上昇する可能性があるため注意が必要です。
リコピン(抗酸化成分)について
抗酸化成分とは:体内で生成される活性酸素によって細胞が酸化されるのを防ぐ働きを持つ成分で、リコピンはその成分のひとつになります。結果として老化予防や免疫力アップなどが期待されます。
リコピンは体の細胞を酸化から守る働きがあり、健康維持に役立つ可能性があります。リコピンが多い野菜としてはトマトがよく知られていますが、じつはスイカにはトマトの約1.5倍のリコピンが含まれています(可食部分の同重量比較)。 リコピンには強い抗酸化作用が期待されていて活性酸素を中和し、細胞の酸化を防ぐことから愛犬の健康維持とアンチエイジングに役立つと考えられます。
リコピンを摂取した方が良い犬は:
老化が気になる犬や高齢犬 … スイカのリコピンは、犬の体内で発生する活性酸素を除去する役割があり、老化防止や病気の予防に繋がると言われています。
心臓に不安のある犬 … 研究によると、リコピンを含む食品の摂取は、心臓病や脳卒中のリスクを軽減する可能性があります。
血圧が高い犬 …スイカのリコピンには、持続的に血圧を下げる可能性があることが示されています。
血流が悪い犬 …アミノ酸のひとつでもあるシトルリンが含まれており、血管を若返らせ血流を良くす効果があります。
リコピン摂取に注意が必要な犬は:
犬がスイカのリコピンを摂取してもリコピン自体が直接悪影響を与えることはありません。
β-カロテン(皮膚・被毛の健康)について
βカロテンは、犬の体内でビタミンAに変換され、皮膚や粘膜の健康維持、毛艶の維持、視力の維持、抗酸化作用に役立ちます。また、トイプードルのふわふわ毛もサポート。
βカロテンを摂取した方が良い犬:
仔犬 … 仔犬は免疫力が低いため、βカロテンによる免疫力向上効果が期待でき、感染症予防に役立ちます。
老犬 … βカロテンを摂取することでビタミンAを補給できますが、個体差で異なります。
目の健康が気になる犬 … 犬の体内でβ-カロテンはビタミンAに変換され、特に目の健康を維持するのに不可欠です。ビタミンAは「目のビタミン」とも呼ばれ、視力低下や白内障の予防に役立つとされています。
皮膚や粘膜の健康を高めたい犬 … ビタミンAは皮膚や粘膜の健康維持にも不可欠な栄養素です。β-カロテンを摂取することで皮膚や粘膜の健康が促進され、健康な被毛や皮膚の状態を保つことができます。また、歯の健康維持にも効果があります。さらに、β-カロテンには強い抗酸化作用があり、体内の活性酸素を除去する働きもあります。
βカロテン摂取に注意が必要な犬は:
腎臓や肝臓が弱い犬 … 腎臓や肝臓に疾患がある犬、または機能が低下している犬は、β-カロテンの摂取を控えるべきです。ビタミンAの蓄積により、これらの臓器への負担が大きくなる可能性があります。
カリウム(利尿作用)について
利尿作用とは:体内の水分を尿として排出する働きのことで、これは、腎臓が血液をろ過して尿を生成する過程で、余分な水分や塩分を体外に排出する機能を指します。結果としてむくみ予防や高血圧の予防などに効果があります。
スイカに含まれるカリウムは、犬の体に様々な良い影響を与えます。具体的には、水分と合わせてカリウムを多く含むみナトリウムとともに細胞内の浸透圧を調節し、塩分の過剰摂取を抑制する働きがあります。また、心臓機能や筋肉の機能の調節など生命維持には欠かせません。ただし、過剰摂取は腎臓疾患のある犬にはカリウムの処理能力が低下しているため負担になるので注意も必要です。
カリウムを摂取した方が良い犬:
腎臓機能が正常な犬の場合 … スイカのカリウムは、体内の水分を適切に保つ働きがあり、犬の体温調節や脱水症状の予防に役立ちます。また、カリウムは体内の余分なナトリウムを排出する働きがあり、血圧を安定させる効果が期待できるため、腎臓機能が正常な犬には良い影響があります。
運動量の多い犬 … カリウムは、筋肉の収縮や神経の伝達に関わるため、運動量の多い犬にはスイカのカリウム摂取は、夏バテや疲労回復をサポートする働きがあり効果的です。
カリウム摂取に注意が必要な犬は:
腎臓病の犬 … カリウムの含有量はそれほど多くはありませんが、腎臓の機能が低下している場合には、カリウムをうまく排泄できないため、血液中のカリウム濃度が高くなることがあります。これを高カリウム血症と呼びます。高カリウム血症は、心臓の機能に異常をきたす原因となり、心不全や不整脈を引き起こす可能性がありますので、与えすぎには注意が必要です。スイカを与える場合は必ず獣医師に相談するようにしましょう。
ビタミンC(抗ストレス作用)について
抗ストレス作用とは … 身体がストレスに対して抵抗力を高めストレスの影響力を最小限に抑えようとする働きのことで、抗ストレスホルモンであるコルチゾールなどの合成にビタミンCが多く消費されます。犬は体内でビタミンCを合成できますが、加齢やストレスで不足する場合は外部からの摂取が助けになります。
ビタミンCを摂取した方が良い犬:
運動不足の犬 … 運動不足は免疫力を低下させる可能性があるため、ビタミンCの補給が有効です。
食欲不振の犬 … 食欲不振はビタミンCの摂取不足につながる可能性があるため、ビタミンCの補給が有効です。
ストレスを多く受けている犬 … ストレスはビタミンCを消耗させるため、ビタミンCの補給が有効です。
骨、関節に問題を抱える犬 …骨や関節にとって大切な成分にコラーゲンがありますが、ビタミンCはコラーゲン生成には欠かせない成分です。そのため、骨、関節にトラブルがある愛犬にはビタミンCを多く摂取することが有効になります。
皮膚トラブルを抱える犬 … ビタミンCはコラーゲンの生成を促進し、皮膚や粘膜の健康を維持するのに役立ちます。
老いが気になる犬 …ビタミンCは、活性酸素を無毒化する抗酸化作用があり、細胞の損傷を予防する効果があるので若さを維持できます。
ビタミンCに注意が必要な犬は:
犬がスイカのビタミンCを摂取しても悪影響を与えることはありません。むしろ適量であれば積極的に摂取する方が良いでしょう。ただし、アレルギーには注意しましょう。
犬にスイカの適量は?【安全重視派】vs【理論派】の見解比較
「安全重視寄り」と「カロリー理論寄り」それぞれの目線から見てみると。
健康第一!控えめに与える【安全重視派】の考え方
「少量ならOK」とされるスイカですが、安全を第一に考える方は「少量ってどれくらい?」と疑問を持つもの。そこで大切になるのが「最低限でも十分」という考え方です。
スイカは90%以上が水分。冷たく甘い果肉は犬にとっても魅力的ですが、与えすぎは下痢や嘔吐、場合によってはアレルギー反応を引き起こすこともあります。また、水分量が非常に多いため、お腹が冷えやすく消化器系の弱い犬やシニア犬では軟便や下痢を起こすこともあります。体調や体質を考慮しながら与えるようにしましょう。
安全重視派は、ごほうびとして一口与える程度を基本とします。具体的には、体重5kg前後のトイプードルであれば小さめカットサイズを1~2個まで。これはカロリーや糖分量よりも、「愛犬がスイカに慣れるか」「その日の体調はどうか」を観察して判断する、非常に実践的かつ優しい方法です。
与える量を最小限に抑えることで、「本当にこの子に合う食材かどうか」を安全に見極められるメリットがあります。まずは少し、様子を見ながら──それが安全派のスタンスです。
数値でしっかり管理!【カロリー理論派】の考え方
一方、カロリーや栄養学的な理論に基づいて給餌量を判断するのが「理論派」の考え方です。
犬の1日の摂取カロリーは、体重だけでなく年齢、去勢・避妊の有無、日々の運動量などによって大きく変わります。
たとえば体重5kgの成犬の場合、安静時に必要なエネルギー量(RER)は以下の式で計算されます。
RER(安静時エネルギー要求量)=体重^0.75 × 70 ⇒ 5^0.75 × 70 ≒ 234kcal
これに犬の活動量に応じた「活動係数」をかけて、1日に必要なカロリー(DER)を算出します。
去勢・避妊済みの成犬(活動係数1.6)で約374kcalが適量とされています。
一方、スイカは100gあたり約41kcalとカロリーが低め。水分が多く、夏場の水分補給にもなりますが、与える量は1日摂取カロリーの10%以内にとどめましょう。
●5kgの成犬なら:―最大でも約37kcal分(スイカ約90g前後)―が目安となります。
理論派はこのように、「全体のバランスの中での果物の位置づけ」を大切にします。ごはんとおやつの合計が適正範囲に収まっていれば、果物からも水分やミネラルを効率よく補える、というポジティブな視点が特徴です。
ただし、ここでも糖分や冷えすぎによる体調不良への配慮は必要。数値だけに頼らず、愛犬の体調と照らし合わせて与える判断力も求められます。
◆上記RER(安静時エネルギー要求量)計算式から1日に必要なカロリー(DER)の算出例
活動係数別の摂取カロリー早見表(体重5kgの例) | |
犬の状態(活動係数) | 1日の必要カロリー(DER) |
安静時(RER) | 約234kcal |
去勢・避妊済みの成犬(1.6) | 約374kcal |
未去勢・未避妊の成犬(1.8) | 約421kcal |
子犬(成長期)2倍~3倍 | 約468~702kcal |
※体重や個体差によって前後するため、獣医の指導のもと調整を。 |
◆スイカそれぞれの重量に含まれるkcal数
スイカ○g=何kcal相当? | |
スイカの量(可食部) | カロリー換算(約41kcal/100g) |
25g(小さめカット) | 約10kcal |
50g(ひと口大) | 約20kcal |
75g(中サイズ) | 約31kcal |
90g(1日の上限目安) | 約37kcal |
100g | 約41kcal |
★体重5㎏の成犬が1日に必要なカロリー数を計算し、スイカから摂取可能なカロリーを算出したイラストです。
RER(安静時エネルギー要求量)、DER(1日の必要エネルギー量)の詳しい計算方法は下記をご覧ください。
どちらの考え方も間違いではありません。重要なのは「その子に合った量・タイミングで与えること」。
安全重視派は「控えめな量で体調を観察」、理論派は「全体のカロリーに基づいた管理」。どちらのアプローチも、愛犬の健康を守るための大切な視点です。
あなたと愛犬の生活スタイルに合った方法を選びましょう。
★下記の表はスイカから摂取可能な1日当たりのカロリーを愛犬の体重別に表したものです。
★スイカ可食部(小さめカット:25g●、ひと口大:50g●、中サイズ:75g●)
※表内の●はg数と個数を示す物で、例えば、中サイズ:75gをそのまま与えるという意味ではありません。小型犬などには細かく砕いてから与えるようにしましょう。
★下記の表右側のカロリー数は上記計算式から出した1日に必要なカロリーの約10%になります。右側のカロリー数は安全第一に考え、様子を伺いながら与えるときの目安。
スイカ適量表/1日あたりの目安 | ||
体 重 | 安全重視寄り:g数/kcal数/個数 | カロリー理論寄り:g数/kcal数/個数 |
1㎏ | 13g/5kcal/●弱 | 27g/11kcal/●強 |
3㎏ | 30g/12kcal/●強 | 60g/25kcal/●●強 |
5㎏ | 45g/18kcal/●●弱 | 90g/37kcal/●●●●弱 |
7㎏ | 55g/22kcal/●強 | 115g/47kcal/●●●弱 |
9㎏ | 70g/28kcal/●●弱 | 142g/58kcal/●●●弱 |
10㎏ | 75g/30kcal/●● | 153g/63kcal/●●●強 |
11㎏ | 80g/32kcal/●●強 | 163g/67kcal/●●●●弱 |
12㎏ | 90g/36kcal/●●弱 | 175g/72kcal/●●●● |
13㎏ | 93g/38kcal/●●弱 | 188g/77kcal/●●●強 |
14㎏ | 98g/40kcal/●●弱 | 197g/81kcal/●●●●弱 |
15㎏ | 103g/42kcal/●●強 | 207g/85kcal/●●●●強 |
20㎏ | 129g/53kcal/●●●強 | 258g/106kcal/●●●●●強 |
25㎏ | 152g/62kcal/●●●強 | 305g/125kcal/●●●●●強 |
30㎏ | 171g/70kcal/●●●●弱 | 348g/143kcal/●●●●●●●弱 |
※上記表の右側の数字はあくまでも理論上の数字になります。それぞれの愛犬の体調や年齢、運動量をふまえたうえで参考に。また、持病など体調に不安がある場合にはかかり付けの獣医師さんにご相談していただくと安心です。
※上記表のkcal数はRER(安静時エネルギー量)の数字にDER(1日の必要エネルギー量)成犬期 去勢・避妊済み/1.6を掛けた数字の10%の数字になります。また、この計算方法で出た数字は一つの目安であり、愛犬の体調、運動量などで変わってきます。
犬にスイカを与える際の基本的注意点
スイカを与える際には以下の点に注意しましょう。
●メインの食事に影響を与えない
スイカでお腹がいっぱいにならないように。これが最も基本的な注意点。メインの食事のバランスを崩さないように注意しましょう。(あくまでもおやつとして与える)
●皮・種を与えない
犬は皮や種を消化しにくく、消化不良や腸閉塞を引き起こす可能性があります。
●冷しすぎはNG
冷蔵庫から出したすぐの冷えすぎたスイカは犬の胃腸を刺激し、下痢や嘔吐の原因になることがあります。
●果肉を小さく切る
犬は食べ物をあまり噛まないので、大きなスイカの果肉を丸呑みしてしまい、のどに詰まらせる可能性があります。そのため、2cm程度に小さくカットするか細かく果肉を砕いてから与えるようにしましょう。
●少量ずつ与える
スイカは水分が多いので、与えすぎるとお腹が緩くなる可能性があります。初めて与える場合は少量から始め、犬の体調に変化がないか確認しながら与えましょう。
●アレルギーや下痢に注意
スイカに限らず、初めての食べ物を与える際は、アレルギーや病気がないか確認しましょう。また、イネ科やキク科の花粉症、ウリ科のアレルギー、腎臓病の犬は、スイカを与えるのを控えましょう。
●スイカの加工食品は避ける
スイカ風味のおやつやキャンディには、犬にとって有害な成分が含まれている可能性があります。「生のスイカ果肉のみ」が基本です。
まとめ
スイカは、水分・栄養ともに優秀な夏の果物。正しく与えれば、犬にとっても嬉しいご褒美になります。
ただし、「適量」「種・皮は与えない」「冷やしすぎない」といったルールを守ることが前提です。
トイプードルなどの小型犬では、ごく少量からスタートし、体調をよく観察しましょう。
愛犬の健康を守るのは、飼い主の知識と判断です。
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